「教員」というと、「何かを教える人」と返ってきます。確かに、言葉通りです。人に何かを教えたり、人をより良い高みに導いたりすることで、対価を頂く職業です。
全体としてはその通りなのですが、教職に就いていた者として、学校種が変わると、その「教員」に求められるスキルは大きく変わってきます。
「学校教育法第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。」(学校教育法 昭和22年法律第26号)
これが法律に規定されている「学校」の種類です。学校といっても、これだけの種類があります。一般に考えられる小学校・中学校・高校・大学の4種類の他に、特別支援学校やその他の聞き慣れない学校もあれば、法律上、実は幼稚園も学校に分類されます。
この中で、例えば「幼稚園」と「大学」では、もちろんその教員に求められるスキルは当然変わってきます。幼稚園で「経済学」の授業はやりませんし、大学で「手遊び」を延々とやっていたら(そこが教育・保育学などの専門授業でない限り)学生にそっぽを向かれてしまいます。
そういった大きな視点から「小学校教員」を考えてみると、他の校種にはないある特徴が浮かび上がってきます。
今回はその特徴を「向いている人のスキル」という点と絡めながら、私なりの視点でまとめていきます。
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学級経営ができる人
経営手腕が問われます。
というと、どこかの社長へのメッセージかと思いますが、実はある意味、小学校教員に一番問われているスキルかもしれません。
なぜなら、小学校の他の学校種と大きく異なる点の一つ目は、
学級担任の裁量がとても大きい
ことです。
考えてみてください。自分の小学校の担任の先生と、中学・高校の担任の先生と(思い出せる方は幼稚園も)の印象の違いを。
断然、小学校の担任の方が印象が強いと思います。
当然です。なぜなら、一日中その先生と教室で過ごすからです。(教科担任制をとっていない限り)
小学校教員(学級担任)は、自分の学級の授業・生活指導全般への裁量権があります。それは、一人で30人前後の子供たちの勉強と行動を教育することです。
つまり、小学校教員は学習・生活指導を全て含めた、自分の学級組織への責任が主になってきます。対して、中学・高校は教科担任制なので、教員は自分の授業への責任が主になってきます。(大学は授業・研究への責任が主です。)
その点が、他の校種と異なるところです。
はっきり言って、どれだけ授業が上手くても、生活指導が上手でも、学級経営が下手では、小学校教員はできません。
「学級経営」とは、学級全員の所属感と自己肯定感を向上させ、全員がより良い高みを目指せる「環境を整える」ことです。
その「環境を整える」具体的な考え方や手法に対して注目し、実践できる人は良い学級経営ができると思います。
言葉を使い分けられる人
小学校入学時の年齢は満6歳、卒業時の年齢は12歳です。
差が6歳、昨日まで幼稚園・保育園に通っていた子と、明日から制服を来て中学に通う子が同じ建物で学ぶ場所、それが小学校です。
他の校種でも新入生と、卒業生では成長の度合いが異なることですが、小学校の場合は、それがとても大きいです。
身長から全然違います。親子かと思えるくらいの差ができる子もいます。
当然、発達の段階が全然異なります。
その中でコミュニケーションをしていく教員は、自分や相手の「言葉」に注目しなければやっていけません。
授業で1年生に「筆者の考えと自分の意見を10分で100文字以内でまとめて」と言っても絶対通じませんし、
6年生に「いつでも、お友だちとなかよくしましょうね」なんて言ったって、子供にナメられるだけです。
相手は何をどこまで理解できて、自分はどのような言葉を使えばいいのか、
言葉に対するセンスが鋭くないと、必ずどこかでつまずいてしまうのが、小学校教員です。
「難しい・厳しい言葉しか使えない」ので低学年学級を壊した教員、
「優しい言葉しか使えない」ので高学年学級から相手にされなくなった教員、
の学級崩壊話はよく聞きます。
社会一般でもそうですが、言葉に対するある程度の感性は、必要だと思います。
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全ての教科に興味をもてる人
私は、中学校と高等学校の教員免許も持っています。(もちろん小学校教員免許もあります。偽物では...ないです。たぶん。)
中学校の免許には「社会」、高等学校の免許には「公民」と書いてあります。つまり、私が中学、高校の教員になったら、該当する教科しか授業ができないということです。(言っちゃいけない話かもしれませんが、とある自治体では該当科目の免許が無い教員に授業をさせている、という話を聞いた事もあります。もちろん、法律違反です。)
ところが、小学校教員免許には教科が書かれていません。みなさんご存知の通り、小学校教員は原則全ての授業を担当します。(「法律上できる」ということです。自治体によっては、音楽や図工などを専門教員の担当にしています。)
国語も算数も理科も社会も体育も、そしてこれからは英語も担当します。
全部完璧に出来る...のが理想ですし、職にあるうちはそれを目指さなければならないですが、人間そんなに器用ではありません。現職の教員も、当然のように得意、不得意な教科があります。
でも、「できるかできないか」より「興味をもてるかもてないか」が大切だと思います。
共通しているのは、子供への指導です。教えなければいけない内容は異なりますが、目の前の子供の様子は変わりませんし、指導方法にもある一定の要素があります。
全部、といっても小学校レベルですので、大人にとっては一般的な知識です。難しい公式や専門用語を解説するわけではありません。
目の前の子供たちに、どうやったら伝わるのかを考えながら、自分の教養を高めるつもりで、教材研究を楽しめる人が向いているのではないかな、と思います。
まとめ
1 学級経営ができる人
2 言葉を使い分けられる人
3 全ての教科に興味がもてる人
他にも必要な要素はいくつもあります。学校現場は組織戦なので、組織で動くことができるスキルも、当然必要になってきます。
今回は、小学校教員の特徴から「向いている人」という観点に落とし込んで話を進めていきました。ここで書いた事はあくまで私見ですので、参考までにお読みください。
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